『出雲国風土記』の国引き神話

島根半島の成立を語る

733年に完成した『出雲国風土記』の「意宇郡(おうぐん)」の冒頭に、出雲国の成り立ちが書かれている。いわゆる「国引き神話」である。これは、『古事記』や『日本書紀』には書かれていない出雲独自の神話である。「八束水臣津野命(やつかみずおみつぬのみこと)」が国をつくるのに、出雲国は小さすぎるので各地から引いてきて継ぎ合わせたと記されている。継ぎ足されたところは島根半島の部分である。

神話の舞台である島根半島は、宍道褶曲帯と呼ばれる大規模な地殻変動が起こったことを示す地質構造で、『出雲国風土記』では引き寄せた陸塊がつなぎ合わさった場所を折絶(おりたえ)と呼び、その場所は地殻変動でできた大規模な断層や褶曲の起こった場所、岩石の種類が異なった地層の境界部分に相当している。また、『出雲国風土記』で神様が陸塊を網で引く様子は、約4400万年前から約1700万年前の大陸から日本列島が分裂する地球科学のプレート運動に似ている。

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