底痕について
堆積粒子や水流そのものにより堆積物の表面につけられたみぞが、その上に堆積した砂や礫によってうめられてできたものです。特にタービダイトのように泥層上に砂礫が堆積する際に形成されたものは、露頭では観察しやすく、その層の堆積時の流れの方向(古流向)を知る手がかりとして役立ちます。おもに砂岩層の底にみられるもので、その成因にもとづき、水の流れの作用によって形成されたもの(流痕:Current mark)、重力の作用で形成されたもの(荷重痕:Load cast)、生物の活動によって形成されたもの(生痕:Trace fossl)に分けられます。
その他には プロッド カスト、ブラッシュ カスト、クレッセント カストなどあります。
クレッセント カスト
礫や砂粒の片側をとりまく三日月形の高まりと反対側の細長いくぼみからなります。礫などの抵抗によって流れが礫のまわりをけずりこんだことによってつくられました。
高まりの部分の方が上流側になります。
小伊津の頁岩・砂岩互層:砂岩の裏側にグルーブ カストがみられます。写真右側は、グルーブ カストとグルーブカストの先端部分です。
堆積した泥の層がまだ凝固していない状態の時、その上に砂などが堆積した場合、砂の層の重みで一部に荷重がかかると、荷重のかかった所が下の泥の層にめり込むようになります。その結果できた突起部を荷重痕(ロード カスト)といいます。
大社町日御碕の泥岩・凝灰質泥岩 まるで波のあとのように凝灰質の泥岩が、泥岩にしずみこんでいるのがわかります。 |
荷重痕の種類:右に行くほど変形が進んでいます。 |
生き物の体そのものではなく生物が活動した痕跡、たとえば足跡やはい跡、摂食の跡などがやわらかい層に残り、それが上に堆積した層にプリントされることがあります。こうしてできたものを生痕(生痕化石)といいます。
代表的な生痕化石としては以下のようなものがあります。(ただし、底痕だけではなく地層の表面に残る生痕化石もたくさんあります。)
巣穴:特に砂や泥の海底に巣穴を掘って生活している生き物(ゴカイやカニなど)の底性動物の巣穴は、多数が集まって発見されることがあります。サンドパイプや砂管と呼ばれることもあります。
はい跡:海底の静かな泥表面を動物がはい回った跡が化石として残ったものです。ゴカイのような動物ならば、のっぺりとした溝のような跡が残りますが、他の生き物では泥の表面をひっかいた跡などが残る場合もあります。
足跡:足を使って歩く動物の足跡が残ることがあります。恐竜の足跡などが有名です。
糞化石:糞が化石として残ったものをいいます。生きものが何を食べていたかを知る手がかりになります。
出雲市塩冶町の生痕化石(巣穴:サンドパイプ) |
カニの巣穴(現生)に石こうを流し込んで作ったサンドパイプ(砂管) |
出雲市佐田町須佐:川合層砂岩に残る生物のはい跡(昔の海底面に残ったもの) |